大人の心の居場所づくり〜「心の居場所」について考える〜

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心理学の知識

こんにちは、もっちです。

今回の記事では、「心の居場所」(心理的居場所)についての考察です。

「居場所」の重要性は、子どもへの支援の文脈ではかなり前から指摘されてきました。

しかし、「居場所」の問題は子どもに特有のものではありません。

大人にとっても大事な「居場所」。

「居場所」とは何か、「心の居場所づくり」とはどういうことなのか、考えてみたいと思います。

この記事を書いた人
motchi(もっち)

関西で活動中の臨床心理士。大学・大学院在学中より、不登校状態にある児童生徒の支援活動に携わる。卒後、自治体の運営する適応指導教室、市役所の児童福祉部署で不登校、子育て、児童虐待など、子どもに関する相談支援事業に従事。
現在は、NPO法人で引きこもりや生きづらさを抱える若者、そのご家族への相談支援に携わっている。

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大人も「心の居場所づくり」が大事

 

不登校やひきこもりの支援の文脈で、「居場所づくりが大事」と言われることがあります。

また、近年では文部科学省が「こどもの居場所づくりに関する指針」を示し、多様な「居場所」のあり方が求められています。

しかし、この「居場所」、特に「心の居場所」の問題は、決して子どもだけのものではありません。

ここでは、「心の居場所」とは何か、大人にとっての「心の居場所づくり」の重要性を考えてみます。

「心の居場所」とは何なのか?

「居場所」の定義は研究者により様々ですが、臨床心理学研究では、心の居場所を指す「居場所」は、以下のように定義づけられることが多いです。

「安心できる」、「受け入れられる」、「ありのままでいられる」、「必要とされている」と感じられる心の状態や環境(人間関係を含む)を指す心理的感覚

つまり、「居場所」とは物理的に場所があることだけではなく、他者との関係性自己の存在が肯定される場が、以下の4つの心理的要素から成り立つことを指しています。

「居場所」を構成する心理的要素
安心感
  • 「自分はここにいて良い」「居心地が良い」と感じられること。
  • 他者との関係性が安定していて、損得勘定で相手が裏切らないと感じられていること。
受容感
  • その場にいる他者から「自分は受け入れられている」と感じること。
  • 無条件に他者から認められている感覚。
本来感
  • ありのままの自分を受け入れられ、自分らしさを保ちながら存在できる感覚。
  • 「これが自分だ」と実感できる、本来の自分を見失わないでいられる感覚。
役割感
  • 自分が誰かの役に立っている、貢献していると感じられること。
  • 人から頼りにされている、必要とされていると感じられること

これらの要素により、精神的な安らぎや安心感を得られることから、「居場所」という言葉に心理的な意味合いが付与され使われることが増え、「心の居場所」と言われるようになりました。

 

「心の居場所づくり」が求められる背景は?

物理的な場所だけでなく、「心の居場所づくり」が求められているのはなぜなのでしょうか?

先にも述べましたが、不登校やひきこもりの文脈では、「居場所」という言葉・考え方がよく使われています。

「心の居場所」がない・見つからないことが、学校へ行くことや外へ出かけることへの恐怖や不安と関連することは、様々な研究により指摘されています。

また、非行問題においても、「心の居場所」のなさが影響すると言われることがあります。

様々な研究や実践の中から、子どもたちの心理的安全、安心してそこにいられる所属感が揺らいでいること、そしてそれが様々な問題に関連していることが見えてきたのです。

こうした背景から、「心の居場所づくり」が必要だと考えられているのです。

 

大人も「心の居場所づくり」を求めている

実のところ、この「心の居場所」が揺らいでいるのは、子どもや若い人たちだけではありません。

子ども時代は、基本的には*親や学校の先生など大人に守られながら、人や社会への基本的な信頼感や安心感を育みます。(*過酷な家庭環境でそれが叶わない児童も存在します…)

そして思春期には、それまでの価値観、大人や社会に疑問を抱き、打ち壊し、新たな自分なりの価値観を確立していきます。その過程には、仲間という横のつながりが大きく影響します。

これまで生きてきた自分の世界、価値観を打ち壊すことは、膨大なエネルギーを使います。

時に自分自身で制御できなくなり、仲間や大人とぶつかったり助けられたりしながら新たな価値観を獲得していきます。

このような過程で、そのままの自分を受け入れられる感覚や、ここに居て良いという安心感は非常に重要なものとなります。

 

ところで、皆さんは「中年期クライシス」という言葉を聞いたことはありますか?

心理発達の過程では、人生の折り返し地点を迎え、体力の低下や更年期などの身体的変化、職場や家庭での役割など社会的変化をきっかけに、自分のこれまでの人生を振り返り、「これで良かったのか」、「このままで良いのか」といった疑問や焦り、不安などを感じることがあります。

これを「中年期クライシス」と呼びます。

思春期 親や先生などの大人、社会の価値観に疑問を抱いたり、仲間(横の繋がり)の中で新たな価値観を獲得していく。「自分は何者であるか」、「自分がこれからいかに生きるか」を悩む時期。
中年期クライシス 人生の折り返し地点にたち、「これまでの人生これで良かったのか」、「これからどう生きていくか」という葛藤を抱く時期。老いを自覚したり、社会役割が変化することから、自分の存在意義を問い直したり、自己の人生に対する満足度を再評価する機会が生じる。

この2つの時期には、自分自身の生き方に悩む、アイデンティティの葛藤が起こるという共通点があります。そして、新たな価値観を取り入れたり、自分自身の存在意義を見出す過程には、やはり他者や社会に対する安心感受容感本来感役割感といった要素が必要です。

「心の居場所」は、大人にとっても重要なものなのです。

また、老年期においても社会との繋がり、役割感や所属感を感じられることの重要性が指摘されています。

このように、私達はライフステージごとに悩み方や葛藤は変化しますが、「心の居場所」の重要性は変わらずに存在しているのです。

 

大人の「心の居場所づくり」について

「居場所」を構成する心理的要素は、子どもも大人も同じですが、実際にどういった場所、繋がりが「心の居場所」になり得るかは、ライフステージごとに異なってきます。

また、子どもへの支援では、多くの場合、横の繋がりの大切さを意識しつつも、大人が「居場所」となりうる関係づくりを手伝うことがあります。学校であれば、スクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーが先生や保護者と協力しながら、子どもと繋がっていきます。

大人と子どもという縦の繋がりとも、仲間という横の繋がりとも少し異なる、『ナナメの繋がり』とよく言われます。家族関係とも、友達関係とも違う繋がり方の中で、他者や自分が属するコミュニティに対する安心感、所属感を徐々に育むことを目指していきます。

大人の場合はどうでしょうか。

インターネットで、『大人 心の居場所づくり 支援』と検索してみると、支援を行っている団体やイベント、「居場所づくり」に関する特集記事など、様々な情報が出てきます。

また、「第三の居場所」「サードプレイス」という言葉も出てきます。

これは、「心の居場所」がないと感じる人や、「居場所づくりが必要」と感じ、動き始めている人が増えているということの現れではないでしょうか。

しかし、筆者の実感としては、「大人は自分で居場所を見つけるもの」という考え方が根強いように思います。

また、子どもの場合は、学校というコミュニティに属していることが当たり前で、学校適応がうまくできているかという点で、「心の居場所づくり」の支援メニューを考え、成果についても評価しやすい面があるように感じています。

それに対して、大人の場合は社会の中にいかに自分を位置づけるかは、自分で決めることができ、その責任は大人自身が持っているものという前提のもと、「心の居場所づくり」のための支援はあまり意識されてこなかったのではないでしょうか。

誰にとっても重要な「心の居場所」ですが、大人の「心の居場所づくり」のための支援のあり方については、まだまだ議論の余地があるものと思われます。

 

いかに「心の居場所づくり」をするか?

大人の場合、自分で居場所を見つけるものという考え方が根強いと言いましたが、支援がまったくないわけではありません。

自治体やNPO団体による支援事業があります。

また、「心理的安全性」という言葉で、その重要性を啓発する書籍も目に止まります。

そうした社会の中にある資源にアクセスしていくことが、「心の居場所づくり」に繋がる第一歩となることはあると思います。

それだけでなく、自分でできる部分もあるので、その例を挙げてみましょう。

自分を理解し、心地よい空間を作る

  • 自分にとって何が心地よいか、不快と感じるかを理解し、生活空間を整える。
  • 無理せず、自分のペースで過ごせる場所を確保する。

セルフモニタリングしながら、自分自身についての理解を深めることにより、心地よい場所や過ごし方を見つけることができます。

人との繋がりを意識する

  • 地域イベントや活動に足を運び、他者と関わる機会を増やす。
  • 挨拶を積極的に行うことで地域の人と話せるきっかけを作る。

自分に無理のない範囲で、自分なりのペースで良いので、地域との繋がりのきっかけを作ります。顔を知っている程度の繋がりから、挨拶をする間柄、挨拶ついでにちょっと話せるようになる、など、地域の中での自分の居場所に繋がっていくことがあります。地域イベントなどでは、そこでできること、役割が見つかることもあります。

自分のための時間を大切にする

  • 一人の時間を過ごすことで、心身ともにリフレッシュする。
  • 自分の時間配分を自分でコントロールする。

逆説的ですが、一人の時間、自分の時間を大切にすることにより、心の余裕が生まれ周囲との良い関係を築く基盤となります。一人の時間を肯定的に捉えることで、孤独感や不安の軽減にも繋がります。

好きなことに没頭する

  • 音楽や料理、絵、ゲームなど、趣味や興味を追求する。
  • スキルアップ(資格取得など)のための学習に集中する。

自分の世界に没頭することで、不安感が軽減されます。また、没頭して何かを成し遂げることで達成感や自己肯定感が高まることにも繋がります。

 

これまで見てきたように、「心の居場所づくり」は、子どもでも大人でも重要なものです。

そしてその重要性は、誰もが日々の生活の中のどこかで感じていることでもあると思います。

「居場所がない」、「ここにいると苦しい」と感じる時には、そこは自分の「心の居場所」ではないのかもしれません。

そんな時は、自分のペースで、あるがままの自分で居られる場所や繋がりを、今いるところから離れて探してみても良いのかもしれませんね。

社会資源にアクセスするも良し、自分でできることから始めるも良し。

あなたのペースで、安心してありのままのあなたで居られる、そんな「心の居場所」が見つけられますように。

 

 

今後の投稿でも、知ってもらえると良いと思う心理学の知識をお届けします。

 

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